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「紫煙の中の未来」ゼットン社長 鈴木伸典のシガーライフ。

アスリートのイメージが強い株式会社ゼットン 鈴木伸典 社長。実は、葉巻(以下、シガー)好きの大先輩の方々が20〜30人ほど所属する愛好会を作り、渋谷・桜ヶ丘にメンバー専用のサロンを開いた時期があるというほどのシガー愛好家だ。

なぜ、シガーの魅力に取り憑かれたのか。シガーとの出会いから魅力、楽しみ方まで、鈴木社長のシガーライフについて、紫煙をくゆらすその一面に迫った。

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鈴木 伸典(Shinsuke Suzuki)
株式会社ゼットン 代表取締役社長

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シガーとの出会い


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—— 今日お持ちのシガーケースの中にある銘柄を教えてください。

1本はキューバ産の「サンルイレイ」というブランドの「レジオス」です。ちょうど12、3年前でしょうか、僕が初めて美味しいなと思ったシガーです。その日は、六本木グランドハイアットのオークドア*1で食事をした後、マデュロ*2に移動して、先輩からいただいた「レジオス」がカバンの中に入っていたのを思い出して火をつけました。オークドアでの食事の状態、マデュロで選んだお酒と「レジオス」の相性がすごく良かったんでしょうね。そこで非常にバランスの取れたマリアージュが生まれて、とても素晴らしい香りと味わいに驚愕しました。思い出の1本ですね。

もう1本は、ニカラグア産の「プラセンシア」。僕の先輩がニカラグアのシガーのエージェントを務めていて、その取り扱いの中で最も気軽なシガーブランドが「プラセンシア」です。これは、急な出張などでシガーを精選する時間がなかった時や、用意したシガーの状態が悪い時のスペアとして、いつも持っている1本です。

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シガーのある風景


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—— 普段、どこでシガーを楽しまれているのでしょうか?ご自宅でも吸われますか?

自宅では吸わないですね。僕は、紙巻のタバコ(以下、タバコ)は吸いませんし、シガーも日中は吸いません。仕事を済ませ、一日の終わりにバーに立ち寄り、1本吸って帰宅します。ナイトキャップ*3のようなものでしょうか。自宅の近くのグローバルダイニングさんの「タブローズラウンジ」をよく利用します。仲の良い友人達とシガーバーで落ち合い、喫烟することも多いですね。

—— ライフスタイルと一体化されていますね。都内でシガーが吸えるポイントはおさえていらっしゃるのですか?

そうですね。地方出張や海外に行く際に、ホテルの手配と同時に行うのが、シガーを吸える場所を探すことです。2つの行為は、ワンセットです(笑)。旅先のホテル近隣にあるシガースポットのインプットは必須事項ですね。

—— バーではどのように過ごされるのですか?滞在時間はどのくらいですか?

シガーは1本あたり、1時間半から2時間くらい時間をかけて喫烟します。その時間で、お店の人と十分コミュニケートできますね。また、シガー愛好家は、話す内容のポイントや吸い方の癖など各人の個性が印象的に映りますので、認知してもらえます。シガーを好む人とサービスする人との面白いリレーションが生まれる世界観を楽しんでいます。

—— 好きなシガーとお酒のコンビネーションはありますか?

シガーの楽しみの側面には、ワインに近い性質を感じます。ワインは合わせる食べ物やその時のシーンによって、選ぶ銘柄が変わりますよね。シガーも同様に、その時々の目的や環境にアジャストすることが大切なのです。もちろん好きな銘柄はありますが、常にそれがベストマッチであるかと言えばそうではなくて。会食後なのか、出張や海外のバカンスなのか、季節感も含めそのシチュエーションを想定し、その時に一番コンディションの良いものを選びます。

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シガーとタバコの違い


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—— 鈴木社長が考える「シガー」と一般的な「タバコ」との違いは何なのでしょうか?

一番大きな違いは、シガーは100%天然の農産物から作られているワインみたいなものだというところですね。タバコの中には添加剤や着火剤が入っていますので、非天然物とでも言いますか、化学物のプロダクトなのです。シガーの原料も「タバコの葉」ですが、一つひとつハンドメイドで一切化学物を使わずに、天然で作られたものです。とはいえ、体に良いという意味ではありませんが。

吸い方に関しても、一般的にタバコの場合は、吸った煙を口に含むだけではなく肺まで吸い込みます。シガーは口腔喫煙と呼ばれ、口に含んだ煙を舌で味わい、吐き出した煙の香りを楽しみます。吸う以前にも「吸い口」を自分の理想にカットしますし、その方法も様々あります。着火のスタイルも多様ですので一連の所作を楽しむのがシガーですね。

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シガーの楽しみ方


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—— シガーといえば、キューバ産(ハバナ産)が著名ですが、風味や特徴、他の生産地、例えばドミニカ産との違いなどはありますか?

キューバ産は、着火してから吸い進めていくにつれ、味が絶妙に変化するのが特徴です。最近は、ドミニカ産やニカラグア産も卓越した製造技術が必要となるプレミアムシガー*4と銘打つシガーを多く生産するようになりましたが、やはり1本の味の変化、その時間を一番に堪能できるのがキューバ産ですね。

—— 「パイプ10年、シガー20年」という言葉を聞きました。吸い方や佇まいを習得するのにそれくらい時間がかかり、奥深いマナーがあるという意味だと解釈していますが。

シガーを吸う人の経験値、例えば、初心者と上級者の違いは、灰の作り方で分かります。また、灰の作り方でシガーの味わいが、大きく変わります。一番大きなポイントは、煙の温度です。温度が低ければ低いほど、味が甘くなります。高ければ高いほど、辛くなります。灰はいわゆるフィルターになります。溜まってくると、強く吸い込んでも煙の温度が下がるので甘みが保ちます。

タバコを吸う人は、灰をトントンと叩いて落としますが、この行為はシガーの作法としてはNGです。作った灰を折るのです。自分が作った灰をシガーが吸われる前の状態で灰皿に置く。これが綺麗に作れた時は、嬉しくてカメラで撮って、 #葉巻の灰の作り方 というハッシュタグでインスタに投稿しちゃいますね(笑)。

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—— シガーの魅力はどんなところですか?

例えば、特別な銘醸ワインを嗜もうとすると、数十万円のお金が必要になりますし、さらに上のランクを欲すると、数百万円の世界になってしまいますよね。でも、シガーは高いものでも数万円です。超富裕層と呼ばれているクラスの人たちの趣味・嗜好とするプレミアムシガーでも、日本円で1本5,000円〜6,000円程度です。

数百万円もするワインを手に入れることができなくても、シガーの嗜み方と味さえしっかり理解できれば、手軽な金額の投資で、普段会話など出来ないようなクラスの人たちとも同じ目線や感覚で話ができます。シガーは、自分を高めることもできるツールでもありますね。

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シガーにハマった理由


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—— シガーにハマった一番の理由は何でしょうか?現在は、どのくらい所有しているのでしょうか?

エイジングシガーと出会ったことでしょうか。熟成の浅いシガーとしっかり熟成されたシガーの味の違いを理解できた時に、さらに深い魅力に取り憑かれました。

シガーの小売価格はタバコと同様に、「たばこ事業法」により財務省認定価格での定価販売が法律で義務づけられており、小売店ごとに販売価格の変更はできません。ワインなど、同じ銘柄でもお店によって販売価格が相違するのと大きな違いです。

要するに、しっかり熟成された良い状態のシガーも、熟成の浅い状態のシガーも同価格。であるならば、理想のエイジングシガーを大量に手にして口にするには、自分自身で熟成させるしかないという結論に達しました。

街のタバコ屋さんで1本単位で購入しても熟成はできません。デスクトップ*5ヒュミドール*6の中で保管しても、熟成はしますが進みが遅いので、タイムリーに楽しめない。一箱ずつシガーを仕入れて、それを大きなロットで熟成させると外的ストレスからも守れ、ベストなコンディションになります。

自宅では、スイスから並行輸入したシガーを常時300〜500本ほど熟成させています。スイスは中世から貴族が避暑地として使っていた場所柄なのか、シガーの消費量がとても多いのです。原産国キューバにとって、スイスは上得意先になりますので、高品質のものが集まります。

—— まるで生き物のようですね。熟成させるポイントを教えてください。

熟成で必要なのが温度と湿度の関係性です。シガーは湿度管理が重要であるとよく言われます。「過加湿」呼ばれる、湿度があり過ぎる状態も良くないですし、低くすぎても良くない。そこをコントロールするのが温度です。一定の状態をキープする一番簡単な方法は、ワインセラーの中にシガーを箱ごと保管することです。

当然、本数・量が多いので、ワインセラーの中でシガー自体が持っている湿度がある程度放出されます。そのセラー内にコップ1杯の水を入れて置いたり、ヒュミディパックという湿度をコントロールするパックに、その容積に合わせたシガーを入れておくことによって、その中の湿度は保たれます。赤ワインを保存する18℃ぐらいの状態で寝かせてあげると、四季のある日本でも熟成できる環境が整います。

ただ、冬場は難しいですね。冬場に熟成を始めても、梅雨を越して秋ぐらいにならないと熟成が進まず、味が不安定なコンディションになってしまいます。仕入れる月によって、同じ銘柄でも吸えるまでの熟成期間が変わってきますね。

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シガーと仕事の関係


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—— すごいノウハウと経験ですね。興味のあることを調べ抜いて徹底するというスタイルは、今の鈴木社長の仕事にあい通じる部分があるように感じますが。

マニアックというか、オタクなんですね(笑)。シガーが好きになると、とにかくシガーを徹底的に追求するし、トライアスロンをやると決めたら、ゴルフなどには目もくれない(笑)。多趣味ではないのですが、自分が興味を持ったことは毎日考えます。

ワインの世界には、ソムリエやワインエキスパートなど資格制度がありますが、シガーの世界も同様に資格制度を有しています。2007〜2009年ぐらいを境に、自分がお店に立つ時間が少なくなりました。現場との距離が離れる不安が湧き、現場に何か役立てる勉強がしたいと思いたち、2009年にシガーの試験を受け、資格を取得しました。シガーに興味のあるスタッフとコミュニケーションも取れ、効果的でしたね。

—— ゼットンのお店でシガーが吸えるというコンセプトのお店は昔からあったのでしょうか?

名古屋テレビ塔のリノベーションをした時に、レストランとラウンジエリアを分けました。その際、当時の稲本社長が「今回のラウンジは本格的にシガーが吸えるラウンジにしたいな」とアイデアを出し、シガーの先生まで招聘してくれました。その好意に応えて、月に1回シガーを勉強したい人たちを集めて講習会を開きました。2006年、2007年のそのタイミングがゼットンでシガーを取り扱うお店のプロジェクトのスタートでした。その中から造詣の深いスタッフを何名も輩出することができました。その後、「orange(オランジェ)」を立ち上げる際には、シガーをしっかりとした状態で取り扱うことができましたし、赤坂「b&r」の開業も一連の流れです。

—— 飲食店経営者として、受動喫煙などタバコの問題に直面していると思いますが、そこをどう捉えていらっしゃいますか?

先日、パリ出張に行っていましたが、自由を大事にする国だというイメージのあったフランスが、意外と早く法規制を導入しました。しかし現在は、若年層を中心に喫煙者は増えています。また諸外国の多くでは、国民の健康を守る観点からタバコ政策をエビデンス(科学的証拠)に基づいて実施しています。当然、吸わない人に対して有害であることはわかりますが、例えば、シガーバーで、ただ煙を吸って体に悪いということではなくて、シガーの歴史を踏まえ一つの文化としてどう繋いでいくか、そのような意味を理解した上で規制をしていくべきではないのかなと思いますね。

シガーを吸っている人口は微増していると感じます。ワインなどのお酒、食事の文化が高水準に達してきて、さらにもう一歩突き抜けた趣味・嗜好という部分でシガーを選ぶ方が増えているのではないでしょうか。

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あなたにとって、シガーとは


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—— 最後に、鈴木社長にとってのシガーとは?

究極の気分転換です(笑)。とてもリラックスできます。その日に起こった出来事やその瞬間浮かんだことなど、頭の中を空っぽにして考えることができますね。そういう意味では、すごく贅沢な1時間半〜2時間です。

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シガーには、スポーツと同じようなリフレッシュ作用があり、仕事に対しても前向きなタイムマネジメントができます。この貴重な時間を捻出するために頑張ろうと思えますから。シガーは自分にとって、無くてはならない、掛けがいのないものです。

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*1 ステーキハウス 六本木ヒルズ グランドハイアット内 
*2 バー&ラウンジ 六本木ヒルズ グランドハイアット内
*3 寝酒の意
*4 厳選された素材と職人が手巻きするシガー
*5 湿度が外から確認できるタイプ
*6 葉巻専用の保管箱

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